無線機の感度を測定してみたくなり、少し前に SG (Signal Generator) をオークションで入手しました。菊水 KSG4300 という機種で 10kHz~280MHz を発振できます。SG は HP 製品の出品が多いのですが、HPはなにせ奥行きが長くて置き場所が無い。この菊水SGは IC-7400 と同じ奥行きなのでラックに収まります。発振器なら自分で作れるのではないか?と思いましたが、弱い信号を可変して出力できるようにするのは難しいことがわかりました。KSG4300 の中を見ると、厳重にシールドされていて、余計な信号が外に出ないようになっています。
↓SGの外側のカバーを外し、さらにアルミの蓋を外して上部から見たところ。
無線機感度を調べる前に、このSGがちゃんと出力しているのか見てみます。説明書によれば、最大出力は開放端で 132dBμV つまり Vrms=4.00[V](実効値)のはず。
TBS1022オシロで出力電圧を測定した。
出力 132dBuV @3MHz では Vrms=4.00[V] で仕様どおりです。
しかし、周波数を上げていくと、
5MHz 4.03V
7MHz 4.10V
10MHz 4.18V
20MHz 4.27V
25MHz 4.48V
30MHz 3.65V
となり、出力電圧が一定していない。
TBS1022 は 25MHz のオシロなので、周波数が上がると、測定電圧は下降してくるはず。 https://www.tek.com/ja/documents/primer/evaluating-oscilloscopes によれば、誤差なしで測れるのは 5MHz までの模様。そして 25MHz では -3dB の減衰になる。しかしながら、実測では逆に電圧が上昇している。
ということで、このSGは出力周波数によって出力電圧が変わってしまう、という問題をかかえている。
表示されている絶対出力値は当てにならないが、10MHz 以下なら概ね最大出力値の誤差は小さいので、感度の相対比較であれば問題はない。普段使っている 7MHz で感度をチェックしてみる。
-73dBm について
本来の S/N 測定ならば http://musen8.blog.fc2.com/blog-entry-149.html のページに記載されているような方法でやるらしいが、面倒なので、-73dBm 入力時のSメーターの読みを見ることにした。
-73dBm は無線機の「Sメーター 9」に相当する入力レベルとのこと。
https://ja.wikipedia.org/wiki/DBm
これでは測定しているのはSメーター感度になってしまうが、とりあえずということで。
[KSG4300 で -73dBm @7MHzの信号を入れた場合]
※P1, P2 の値は Pre Amp 1, 2 を ON した時
名称 |
Sの値 |
Sが 9 になるSG出力レベル |
IC-7400 |
S9 P1:S9+10 P2:S9+10 |
-73dBm |
FTDX10 |
S6 P1=S9 P2=S9+10 |
-64dBm |
TS-130V |
S4 |
-62dBm |
FRG-7 |
S9+30 |
-95dBm |
FT-101ZD |
S9+5 |
-77dBm |
R-600 |
S9+10 |
-83dBm |
QCX+ ※1 |
S6 |
-64dBm |
KEM-RX7-DX ※2 |
(かなり強力に受信) |
-113dBm |
ER-21T ※3 |
(かろうじて変調音聞こえる) |
-51dBm |
現代のリグは、プリアンプ「入」で昭和のリグ(受信機)と同じ程度のSになる設計のようです。TS-130V はSメーターの振れは少なめですが、使っているぶんには特に感度低下は感じません。
※1 QCX+ は以前制作したキット
QCX+ 5W CW トランシーバーキット着 - cruzioのブログ
S メーターは 12 個のバー表示式で、しきい値をメニューから変更できる。今回の測定はデフォルト状態。意外に感度は悪くなかった。
※2 KEM-RX7-DX は以前制作したキット
Sメーターが無いので、-113dBm はスピーカーから変調音が聞こえなくなるレベル。プリアンプを付けているためか感度良い。
※3 ER-21T は短波を受信可能な小型ポータブルラジオ。
アナログ愛 ELPA ER-21T - cruzioのブログ
-51dBm は、液晶の "Tune" 表示が点灯したときのレベル。さすがにこの手のラジオになると明らかに感度は下がる。
総じて、無線機や受信機と呼ばれる機器であれば感度はほとんど差は無いことがわかりました。今度は無線機の調整などもしてみたい。。